『世界自炊紀行』 キッチンから色んな生き様が見える

『世界自炊紀行』山口祐加

料理家である著者が、世界各国の「自炊」を取材した一冊。
2024年に、12カ国38家庭を巡ったそうです。
すごいペースで世界を駆け巡ってる…。

章立ては、国ごと。
2家庭の取材レポートと、その国の料理事情や学びがまとまっています。
調理風景の写真がたっぷりで、調理過程も詳細に書かれている。
さすが料理のプロなので、この本文を読むだけでレシピ再現できそう。
章の最後には、ご当地自炊レシピもちゃんと載っています。

とはいえサンプル数が多いわけでもないし、取材対象もバイアスがかかっている(自炊の取材を受けるという時点で、料理上手やプロが入っちゃってる)。
ので、「世界の自炊の平均値」では決してないのですが。

むしろ、各国のサンプル1の、解像度の高いレポートとして見るのが楽しい!
世界は多様で、暮らし方だって各家庭でそれぞれ違うんだよな〜。
ってのが、めっちゃ垣間見れて楽しい一冊ですよ!

(私は人の家を見るのが大好き。
 テレ東の「家、ついて行ってイイですか?」ほんと好き)

台湾の、独身向けマンションなのに、強火力コンロとか。
(やはり中華系の料理は火力が大事なんだな〜)
ラオスの豪邸で、調理家電もたくさんあるのに、わざわざ炭火を熾こして屋外調理をしているとか。

そういえばヨーロッパの取材対象は、ちょっと意識高い系の人が多かったイメージだったな。
彼らは総じてお肉をあまり食べない(完全なベジタリアンばかりではないけど)。
フランスは肉の値段が高騰しているようですが、「この国のみんながそういう意識」ではないよな〜、という感じ。
もちろん、読者が自由に感じれば良いとこですね。

ポルトガルの魚介消費量が世界5位とか、
「バカリャウ」(干し鱈)があらゆる料理に入っているとかは、
他の本でも読んだやつ〜!となって、嬉しい。
ちなみにポルトガルは一人当たりのワイン消費量が世界一だそうです。へえ〜。
ポルトガル、俄然、行きたくなった笑

ペルーでエスカベッチェをつくっていたのも嬉しい。
カツオでつくる南蛮漬けみたい。唐辛子がだいぶ効いているようですが。

そうそう、この本は最初に書いたように2024年の取材。
つまりコロナ後の各国に行かれているんです。
そこらへんのエピソードはすごくおもしろい。

ペルーは料理が女性の役割という意識が大きかったようですが、コロナ禍で買い物に出る日を男性・女性に分けたそうなんです。
男性のお買い物の日、スーパーで慣れない食材を探し、妻に電話で「あれどこ?ないよ?」とやってる姿がたくさん見られたとか。
こういう可視化はおもしろいね。

一方のタイ・バンコクは元々、外食がリーズナブルで、コロナ後はデリバリーも充実、さらに自炊しなくて良い環境になっているようです。
確かに、日本もデリバリー環境が格段に整ったもんなあ…。

とはいえ今は過渡期かもしれない。
著者も、10年後に自著を読み返すのが楽しみと言っています。
10年後、外食やデリバリー事情がどうなっているか、自炊の潮流がどうなっているか。
今とはまた違うんだろうな、と考えちゃいますね。

そんなこんなで楽しかった!
もっと秘境の自炊が見たいんだ!という方は、『世界の台所探検』がオススメ。