『馬の世界史』本村凌二
結局、また「世界史系」を読んでいます笑。あっちこっちの歴史がコネクトするのが捗るんだな。
本村先生は古代ローマが専門の先生ですが、
『興亡の世界史 地中海世界とローマ帝国』
その本職を上回る勢いの「馬好きおじさん」である。
馬が好きすぎて、専門の古代ローマに留まらず世界史を書いちゃったのが、この一冊です。
推しがある人生っていいなあ。
導入も良いですね。
地球上にはこの1万年で4000種の哺乳類が棲息したが、人間が飼い慣らして家畜化できたのはわずか10種程度。
その貴重な一種が馬である、と。(ちなみに最古の家畜は犬。次が羊、山羊など人類のお腹を満たしてくれる系)
馬の家畜化の最初はがっつり特定はできていないらしいのですが、紀元前2000年頃には馬に引かせる戦車があったそうです。
インド=ヨーロッパ語系の、ヒッタイト人、ミタンニ人、カッシート人。
ヒッタイトの名物は鉄器と馬戦車。
古バビロニア王国を滅ぼし、ミタンニも滅ぼし、エジプトのラムセス2世と「カデシュの大会戦」やったりしてる。強い!
名前が判明している最古の騎馬遊牧民は「キンメリア人」だそうです。
始めて聞く名前…。インド=ヨーロッパ語系。
紀元前8世紀にウラルトゥ王国を滅ぼし、アッシリア領内へも侵入。
馬が引く戦車と、騎馬は、別物なんですね。という初歩的な驚きがありました。
確かに、馬に「乗るぜ!乗りながら戦うぜ!」と思うのはだいぶ勇気がいるよな。
紀元前5世紀になると「スキタイ人」が登場。
ヘロドトス『歴史』のおかげで商人イメージがありますが、全員騎馬戦士というがっつり騎馬遊牧民族。ペルシア人は「サカ」「サカイ」と呼ぶ。
ヘロドトスが描くスキタイ人と、司馬遷が描く匈奴は、驚くほど記述が似ているそうです。ふたつの民族の間には200年くらいの時間差があるみたいですが。ユーラシア大陸って繋がってるんだなあ、と当然の感想を抱く。(サカと匈奴の真ん中あたりの遊牧民族が「月氏(げっし)」)
アケメネス朝ペルシアがキュロス2世時代(BC559-530)にいけいけになった際も、スキタイ人にはなかなか勝てなかったらしい。
スキタイ(黒海の東側)が強いので、しょうがない、ギリシアに喧嘩売ったろ、っとなって遠征、ペルシア戦争になったとかなんとか。
ほんまかいな。
モンゴル高原では、東胡系の烏丸(うがん)、鮮卑(せんぴ)、拓跋氏(たくばつし)等の騎馬遊牧民族が出まして。
5世紀は柔然(じゅうぜん)とエフタルが二強。
エフタルはイラン系で、ササン朝ペルシアやグプタ朝インドが被害者です。強すぎて「破仏」と呼ばれたとか。かっこいいな。そんなエフタルも、6世紀には突厥に滅ぼされる。うーん、盛者必衰。
とにかく騎馬遊牧民が強い。
それは知っていたんですが、故に、権力者が「名馬を求める」という力学が歴史に働いているという、その視点はなかった。
なるほど〜。
アレクサンドロスは暴れ馬ブケパロスを愛用し、漢帝国の武帝は汗血馬を求めてフェルガーナ(大宛国)まで施設を送り、イスラム教では馬を「至上の祝福」と呼ぶ。
シルクロードではソグド人が「絹馬貿易」を担い(絹は高く売れそうだけど、馬はどうなの?とずっと思っていました…)、十字軍はオリエントのアラブ馬をヨーロッパに伝えたという。
馬、すごいな!
馬で見る世界史、おもしろかった!
最後にあとがきで、本村先生が専門外の知識をカバーする手法を書いていたんですが。
大学内で近所の研究室の扉を叩いたり、廊下ですれ違いざまに分からない箇所を聞いたりした、と。大学って知の集合だなあってしみじみしました。
参考にならねえ笑
